2022年06月23日

水曜日の夜・3








合間に、イツキは電話に出る。
飲みの席で、とも思ったが、少しでも隣の男から離れる理由が欲しかった。

席を立ち、廊下に出て、黒川の声を聞く。



『……騒がしいな』
「夜は飲み会だって言ったじゃん。…お疲れ様会、みたいな…」
『松田は来てるのか?』
「来てないよ」


……黒川は松田の存在を気にしているようだが、それはイツキも同じだった。
確か、この宴席には来ると言っていたが、予定が変わったのか、まだ姿は見えない。

もっとも今は、それ以上にタチの悪い男に絡まれていて、辟易としているのだが。


「……ヤな酔っ払いに絡まれてて、大変…」
『適当にあしらっておけ。…得意だろう?』


つい愚痴を溢すイツキを、黒川はいつもの調子で流す。それがどこか、イツキの気に障る。


「…得意なこと、していいなら、するけど。
……マサヤも昨日はお楽しみだったんでしょ? 得意なことでも、した?」


何を言っても鼻で笑い、まともに取り合わない黒川に、同じ言葉を返す。
そう意味もない、ただの言葉遊び程度のつもりだったのだが


『楽しいもクソもあるかよ、抱くのも仕事の内だ………』


……結果、知りたくもない話を聞いてしまった。








posted by 白黒ぼたん at 00:41 | TrackBack(0) | 日記
この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/189619107
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック