2022年06月24日

水曜日の夜・4









『……へー、……そう。……ふぅん。…………じゃあね』


イツキの電話はそんな言葉を残して切れた。
黒川は、もしかして自分は余計な事を言ったのではないかと、少し、思った。





通話を終えたイツキはスマホをポケットに仕舞い、溜息…というよりは強い鼻息を立てる。
黒川が仕事絡みで女性を相手にすることがあるのは……解ってはいるが、あえてそれを聞きたい訳ではない。
嫉妬だと認めてしまうのも酷く癪に障る。

イツキはもう一度大きなため息を付いて、宴席へと戻る。
一度席を離れたのだから、もう、あの男の隣に戻る必要もないと思っていたが…

ちらりと伺うと、男の前には、ハーバルの社長が呼びつけられていた。

男は笑い声を上げ、楽しげにしていたが、やはりどこか威圧的で
あまり酒に強くない社長のグラスに波々と日本酒を注ぎ、早く飲み干せと煽っていた。



「……いや、私、そんなには飲めないんですよ。女房にも止められてまして…」
「ハァ? 何言ってるの。そんなんじゃ付き合いも何も無いでしょう」
「…いや、……はあ」


仕方なく社長はグラスに2、3口、口を付けると、すかさず男は注ぎ足し煽る。
社長は弱り切り、申し訳無いと言った風に頭を下げる。
男は馬鹿にしたように笑い、その上、不機嫌さを滲ませていた。




「じゃあ俺が頂きます」



イツキは社長の隣にすっと、座り、持っていたグラスを受け取ると

その酒を、一気に飲み干した。






posted by 白黒ぼたん at 23:26 | TrackBack(0) | 日記
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