2022年07月01日
水曜日の夜・7
「………ちょっと、失礼しますね………」
イツキはトイレに行くと言って、ゆっくりと席を立つ。
重ねた指先と目線が名残惜しそうに小山に絡む。
………どう考えても、誘っているのだろうと……小山が誤解するのも無理は無い。
座敷は良い具合にざわついている。遅れてやって来た参加者がいたらしい。
その賑わいに紛れ、小山はイツキの後を追い、部屋を出て行った。
座敷の隣りにはお誂え向きに、小さな部屋があった。
使っていない座布団やテーブルを片付ける部屋だ。
イツキはわざとその前で立ち止まり、小山が来たのを確かめてから部屋に入る。
最初に会った時からイツキは小山が嫌いだった。
だからと言って、何かをと考えていた訳では無かったが
自分だけにではなく、ハーバルの社長にも横柄な態度を見せていたし
何より、黒川との電話のせいで少々……苛々していたし
色目を使い、少し、からかってやるつもりだった。
大声を上げて人を呼べば、恥を掻くのは小山の方だろう。
もっとも
イツキのこんな企みは、ほぼほぼ上手く行った試しはない。
上げたつもりの悲鳴は隣りの座敷には全く届かなかった。
posted by 白黒ぼたん at 21:00
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