2022年07月15日

水曜日の真夜中・2








ベッドの縁に腰掛けたイツキはビールを一本飲み干すと
空き缶をサイドテーブルに置き、はすっぱに、手の甲で口元を拭う。
それから、自分のズボンのファスナーを下ろし、くしゅくしゅっと脱ぎ足先で放り投げる。
シャツのボタンを外し、肩のあたりまで肌を晒すと、後はご自由にと身を横たえる。


投げやりな様子と微かに匂う色気が、ちぐはぐ過ぎて
……こんな状況に慣れている松田でさえ、戸惑う。

イツキが、こうやって男を誘う商売をしているのだとは……解っている。
解ってはいるのだけど、そう思う以前に、どこかの何かが掻き乱される。



「………イツキくん、……酔ってるでしょ?」
「………………駄目…ですか?」
「いや。…………ぜんぜん……」



誘っておいてしかも据え膳。断る理由もないが、……本能的に何かの罠ではないかとも思う。
事実、肩に触れた手は、そのまま吸い取られてしまうのかと思うほど馴染み、滑り
同時にイツキが目を閉じ、ん…、と言葉にならない息を吐くと
これ以上を求められているのだと、変な責任感に似た感情まで生まれてくる。


何度か、イツキを抱いた事はあるが、その都度、感触が違う。
どれが本当の姿なのだろうかと………、探るのは危険だと、知ってはいるのだけど。



唇を重ねると、一瞬、拒む様子を見せたりする。
それでも開き、舌を絡める。そのくせ…身体は強張り、手をきゅっと握りしめたりする。



松田はその手を、指を、一本づつ解きほぐす。
いちいち、イツキが甘い吐息を吐くのが、………気に触る。






posted by 白黒ぼたん at 23:56| Comment(0) | 日記
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