2022年08月16日

木曜日の昼下がり・4








「松田さん…」
「なんだい?」
「松田さん、ビール飲んでちゃ、駄目じゃないですか?」




風呂上がりに美味しい料理が並び、うっかりしていたのだけど…
松田は車でここに来ているのだ。酒を飲んでいてはまずい。

もっとも松田は確信犯のようで、「んー?」ととぼけた様子で手に持っていたジョッキを口もとに寄せた。


「はは、夜には醒めるよ。代行だって、タクシーだっていいし。俺、金持ちよ?」
「………そうですけど…」
「それとも何?、こんな美味しそうな料理とイツキくん目の前にして、酒も飲むなって事?」
「………いえ、まあ……そうですよね……」



若干、困り顔のイツキを松田は笑い、タブレットで次のビールを注文する。
勿論、松田の運転でなくとも帰る手立てはあるのだろうが…、このままズルズルと時間を延ばしてしまいそうだ…。

部屋では、黒川が、待っているかも知れない。

待っていないかも知れない。ああ、もう、その事を考えるのは無しにすると決めたのに。



「………イツキくん、赤城牛ステーキ入りコロッケとメンチカツ、どっちにする?」
「……………メンチカツで……」


とりあえず、出された料理と酒を飲んでから考える事にする。


やはり、一応、黒川に連絡だけしておこうと、スマホを覗くとそこには



画面一杯に、黒川からの着信とメッセージの通知が並んでいた。







posted by 白黒ぼたん at 21:47 | TrackBack(0) | 日記
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