2022年08月17日

木曜日の昼下がり・5








最後にスマホをチェックしたのは朝、ハーバルの本社を出た時。
松田の車に乗り、黒川に連絡を入れようかどうしようか…悩み、結局そのままポケットに入れてしまった。

それから風呂に入り、2時間…3時間が経っただろうか。
何度かの着信とメッセージの通知。内容を確認するのも空恐ろしい。


「どうしたの? イツキくん?」


注文の料理を取りに席を立っていた松田が戻ってくる。
スマホを持ったまま固まるイツキに声を掛ける。


「メンチ、レモン絞っていい? 熱い内に食べな。ん?」
「…………マサヤから、連絡が来てて………」


メッセージの一つを開くとそこには短く『今、どこだ』と。
イツキは顔を顰めながら、とりあえずビールを流し込む。
……今は、……そう悪い事もしていないはずだが…、こうも急に動向をチェックされると、何かやましい気分になる。
居心地が悪い。



「ふふ。イツキくんのことが、気になるんだねぇ」
「…でも、急にですよ。……今までさんざん放っておいて…」

「だって、俺、連絡したもん。イツキくんと風呂屋に行くって」





松田の言葉に、イツキは思わず、ビールを吹き出しそうになった。





「だって、下手に隠すのもアレでしょ。…昨日の事は別として。
イツキくんだって、普通にしてれば良いんだよ。でしょ?」

「…………まあ、…………そうですけど…………」




あっけらかんと話す松田に、うっかり、イツキも乗せられてしまう。
…昨日の事は別として、確かに、そう、後ろめたい、やましい気分になる事は無いのかも知れない。


『仕事は終わったんだけど、松田さんとスーパー銭湯に来ています。夜には帰る予定です』


黒川にメッセージの返信を送ると、何故かイツキは鼻息を荒くして
メンチカツをガツガツと頬張るのだった。






posted by 白黒ぼたん at 23:44 | TrackBack(0) | 日記
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