2022年08月26日

木曜日の昼下がり・終








さて。

黒川の運転する車の中で目を覚ましたイツキは、しばらくポカンとし、どういう状況なのかを考える。
黒川からの連絡を気にしながら、不安を押し流すように酒を飲んだのは覚えている。
潰れ、引き摺るように抱きかかえられながら車に乗ったのはなんとなく覚えているが
それが黒川に似ていた気がしたのは、ただの自分の夢なのかと思っていた。



「………まったく。……出張が聞いて呆れる。仕事が終わったのならとっとと帰って来ればいいものを。
………真昼間から風呂屋に行って、飲み潰れている馬鹿がいるか。しかも、松田と。
どこまで心配をさせる気だ。馬鹿が」



黒川はイツキを見ずに…、まあ、運転中なので当然なのだが…、常套句のような悪態を並べる。



「………心配して、………迎えに来てくれたの? マサヤ」
「…………ものの、ついでだ……」



勿論、こんな場所に来る「もののついで」などある筈もない。
黒川は不機嫌を装い、ふんと鼻で息を吐き、曲がり角でウィンカーを上げハンドルを切る。

イツキは

このタイミングで黒川に会いたくは無かった。

真面目な仕事中にバランスを崩し、酒とセックスに転んでしまったのは…元はと言えば黒川のせいなのだ。

黒川の悪さも、自分の悪さも、まだ整理が付いていない。こんな状態で、どう接して良いのか解らない。




「…………マサヤ」







何を話して良いのか解らなかったけれど、気付いた時にはイツキは
運転席と助手席の隙間から身を乗り出し、黒川の身体に抱きついていた。


これには黒川も流石に驚いて


あやうく運転を誤り、道端の電柱に突っ込みそうになっていた。






posted by 白黒ぼたん at 12:58 | TrackBack(0) | 日記
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