2022年09月26日

一休み









ノックの後に事務所に入って来た男を見て、黒川は顔を顰める。
一ノ宮は、おや、という風に短く声を上げ、急ぎ、お茶の用意などをする。


「…一ノ宮、茶なんぞ、いらん。………何の用だよ、松田」
「ええ、それはあんまりじゃない?……また東京の仕事でね、ちょっと寄っただけですよ」
「………ふん」


松田は笑い、地元の土産なのか紙袋を一ノ宮に渡す。
一ノ宮は松田をソファを勧め、「ああ、お茶よりアルコールの方が宜しいですかね」などと言い
さらに黒川をムッとさせる。


特別、嫌いな相手では無いのだが……何となく、苦手。こと、イツキが絡む案件では。
それは、一ノ宮にも解っているようで、……逆に一ノ宮はそれが面白かった。



「じゃあ、ビール貰っちゃおうかな。実はもう、一仕事終えた後でね。黒川さん、一緒に夕飯、どうですか?」
「…行かん」
「じゃー、イツキくんでも誘うかなぁ」



解りやすい軽口に、つい一ノ宮は笑いそうになる。
黒川も一ノ宮もまだ事務所での仕事が残っているため、一緒に食事には出掛けないが
まあ、一休みも兼ねて、ソファーのテーブルにビールと軽い食べ物などを並べる。


「松田さん、先日、会長にお会いしましたよ、例の件はありがとうございました」
「いや、ウチも助かったからさ。これからも宜しく頼みますわ」



一応、松田と黒川は仕事上では良い付き合いをしている。
土地が離れていることもあり直接的な利害が少ない事が、幸いしている。
「イツキ」についても、身体の関係はあるが、不思議と酷い執着は見せない。
適度な距離感なのだが、黒川は、その距離に慣れていないらしく……どうにも


いつも、間合いを崩されるような気がするのだ。





posted by 白黒ぼたん at 23:26 | TrackBack(0) | 日記
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