2022年09月29日

傍耳








事務所の応接セットのソファに松田、その隣に一ノ宮。
その向かいに黒川が座る。
時間は20時を回ったあたり。
当たり障りのない世間話から、真面目な仕事の話しも少し。

一休みで軽く一杯の筈だったが、すでにビールは3本目。そろそろ
スタートといった所。




「そう言えば…、あの日はちゃんと帰れたの?黒川さん?」


来る話題だとは思っていたが、突然、来られるとやはり多少は動揺する。
黒川はビールを吹きそうになるのを何とか留まり、静かに「……ああ」とだけ言う。


別に内緒の話しでもないのだが、イツキを出張先まで迎えに行った事は、一ノ宮には話していなかった。
もっとも、あえて言わなくても、一ノ宮の想像の範囲内だったのだけど。
一ノ宮は少し柔らかな視線を黒川に向けただけで、何も言わず、
ソファから腰を上げ、他にツマミになるようなものはないかと、奥の冷蔵庫に向かう。

ガサガサとやりながら……

松田と黒川の会話に傍耳を立てる。




「ふふ。イツキくんと喧嘩した?」
「………するかよ。………何でだよ」
「えー? スルーだった訳? アレもコレも??」



わざと含む言い方をしているのは、松田なりの冗談のつもりなのだろう。
はははと軽く笑い、酒を飲み、何かを思い出すフリをして、また、笑う。



「イツキくん、色々、大変だったんでしょ?…話し、聞いたら、喧嘩になるかと思って……心配してたのに」
「喧嘩のネタと言えば……お前が出てきたことぐらいだろうよ」
「あはは、違うよ。…黒川さんだよ」
「…………俺が何をしたって言う……」






posted by 白黒ぼたん at 00:28 | TrackBack(0) | 日記
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