2022年10月02日

餃子とレバニラ










仕事の中休みに軽く一杯…の筈だったが
すでにビールは数本目。
一ノ宮は残りの仕事を諦め、パソコンを閉じると、近くの中華屋に食事の出前を頼む。



「………浮気?………なんの話しだ?」
「イツキくんがいない間に、女と寝たんでしょ?」
「女?………ああ、あれか………いや、あれは……」



確かに、心当たりはある。
イツキとの電話で、つい、その事を匂わせた気もする。
しかし、この仕事をしていればそんな事は良くある事で、イツキだって解っているはずだ。
そもそも、一度や二度や三度のセックスなど何の意味も無い事は
イツキ自身が良く知っているだろうに。



「………くだらん。そんな事でイチイチ騒いでいられるかよ……」
「でもイツキくんにはオオゴトだったみたいだよ? あ、一ノ宮さん、餃子ありがとう」



出前が届き、松田は一ノ宮から餃子を受け取る。
一ノ宮はソファには戻らず、少し離れたスツールに座り、黒川と松田のやりとりを眺める。
「イツキ」については泥沼三角関係になってもおかしくはない、変な間柄の筈だが
飄々とした松田の様子からは、それを望んでいるのだとは思えない。
真意はどこにあるのだろうか。それとも

ただ、黒川とイツキの二人が興味深く、チャチャを入れているだけなのだろうか。



「あんただって仕事で女とヤるだろう。挨拶程度だ」
「まあね。でも俺、それは、好きなコの前では言わないよ?不安にさせちゃ、可哀想じゃん」






レバニラ炒めを小皿に取り分けながら、松田がもっともな事を言う。

こんな風に対等に、黒川に口をきく相手というのが珍しくて

……そしてそれを大人しく聞いている黒川珍しくて

一ノ宮は ふふふ、と笑った。






posted by 白黒ぼたん at 15:02 | TrackBack(0) | 日記
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