2022年10月05日
オブラート
少し離れた場所で笑いを噛み殺している一ノ宮を見て、黒川が不機嫌そうな顔をする。
自分より年下の松田にこうも諭されては、面白いはずもないだろう。
「……イツキ相手に、そんな気を遣っても仕方ないだろう。…あいつだってそう、気にもしていないさ…」
まるで自分自身に言い聞かせるように、黒川そう言い、ビールを煽る。
例え、その事でイツキが不安定になったとしても……松田と遊んで気も晴れたのだろう。
……今は何も様子が変わらないのだ。大した問題では無かったのだ。
「………あ…」
変な間合いで声を上げたのは一ノ宮だった。黒川も松田も、思わず一ノ宮を見る。
「……何だ?」
「……あ、いえ……」
ふいに一ノ宮は先日の、レノンの情報を思い出す。
……イツキが、新しい部屋を探している……かも知れないという話。
それ自体が正しい話かも解らないし、何の繋がりも根拠も無いのだけれど
イツキが黒川との関係に何らかの見切りをつけ、黒川の元を離れようとしているのだとしたら……
「……いえ。あれでイツキくんも色々考えて、落とし所を探しているのでしょう。
それでヨシとしてしまうのは、甘えというものです。
雅也、もう少し、真面目に考えた方が良いですよ」
つい、一ノ宮の本音が漏れる。
不確定な話をしても仕方がないと適当に話を繋いだのだが、オブラートに包む間が無かった。
posted by 白黒ぼたん at 23:09
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