2022年10月08日
巣箱
「………ん、…マサヤ?………おかえりなさい…」
事務所でどれだけ飲んだのだろう。
いい酔っ払いになった黒川が部屋に帰ったのは、すでに日付が変わった頃。
イツキはいつものように先に、巣箱で眠っていたのだが
そこに黒川は押し入り、酒臭い呼気を撒き散らす。
「………マサヤ、飲み過ぎ?………どうしたの?」
「………飲んでない。……イツキ、話す事があるだろう?」
「…ええ?…何?………ないよ、そんなの……」
黒川はくだを巻き、狭い巣箱になんとか横になり、イツキに難癖を付ける。
イツキは少しドキリとしたが……これはただの酔っ払いだと気付く。
「……マサヤ、お水、飲んだ?……このまま寝ちゃ、駄目だよ?」
「寝るかよ。………お前と、……してからだ……」
「はいはい」
イツキは少し呆れた様子で答え、身体を捩り、この狭い場所で体勢を整えようとする。
それを
イツキが離れると思ったのか、黒川は腕を回しイツキを抱き留める。
暗闇の中、イツキは黒川を身体の線を見つめる。
愛情がない、という訳ではないことくらい、解っている。
「………じゃあ、ちょっと寝てから、ね。……マサヤ。
俺……、どこにも行かないから……」
「………ああ」
幼子を寝かしつけるように、イツキは黒川の背中をぽんぽんと叩く。
この巣箱の中だけが
この二人が、一番素直でいられる場所なのかも知れない。
posted by 白黒ぼたん at 22:23
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