2022年10月21日

男の話・2







「イツキ…だったよな、あんたんとこの子。
…あの子って、まだ仕事、させてるのか?」

「……いや、もう。……表には出さんよ…」


男の話は『イツキ』の件かと、黒川はグラスの酒を啜りながら答える。
……今でも、『イツキ』を貸せだの売れだの、そんな話は実は多い。
まあ、あれだけ大売り出しをしていたのだから…それも仕方がない事だろう。

「歳を取り過ぎた」や「身体を壊した」や、あるいは冗談めかして
「自分専用にすることにした」と……適当な理由はいくつか用意してある。

けれど、男の話は、少し違った。




「……出してないのか…。じゃあ、人違いかな。……いや、俺も直接会った訳じゃないんで、どうとも言えないんだが…、ウチの若いのが……」

「どこかで、イツキに会ったのか?」

「………ウチの若いのが事務所に連れて来た子が…どうも、素人には思えなくてな……
いや、でも、顔も名前も確認は取れないんで……まあ、違うとは思うんだが…」




男も酒を飲みながら話す。

少し離れた歓楽街で見つけたという少年の話は、非常に興味深く

黒川は、話を続けろよと、空になった男のグラスに酒を注いだ。








「……一昨日の夜だ。俺が事務所に顔を出した時には……もう、終わってたんだが。


浜野が…ああ、ウチの若衆の頭なんだが……、シマの中で無許可の立ちんぼ捕まえてな……
それも女じゃない、男の、だ。20歳そこそこの………」








posted by 白黒ぼたん at 19:31 | TrackBack(0) | 日記
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