2022年10月23日

男の話・3









「同じ場所で3回目だったらしくてな。まあ、目ぇ付けてて…
その日は客を取ったらしくて、便所から二人仲良く出て来たんで…
事務所に引っ張って行ってだな………」



男の話を黒川は、さして興味が無さそうな振りをして聞く。
酒のグラスに口を付けながら、一昨日のイツキはどうしていただろうかと考える。

一昨日は……自分も仕事で、飲んで帰り……部屋に戻ったのは明け方だった。
そのまま寝室で寝てしまったが…多分イツキは……巣箱で寝ていた。と、思う。






『……お兄ちゃん、なんで連れて来られたか解る? 駄目なんだよね、勝手なことされちゃうと…』
『……許可、……必要な場所でした?』
『そりゃあね。……何?どこの子?……バックがいるの?』


ヤクザの事務所に連れて来られた少年と、客とおぼしき若い会社員風。
客の方は怯え、身を強ばらせ、自分は何もしていないんです…と半泣きで訴えているのだが
少年の方は普通に、平然と受け答えをしている。
その様子だけでも、一般の者とは思えない。


『……ごめんなさい。……お小遣いが欲しくて、トイレでちょっと…遊んでただけです』
『……遊んでたって言ってもなぁ、……ガキの遊びじゃねぇだろ ああ?』


組の若い衆は机をバンバンと叩き、凄みを効かせ声を張り上げてみるも
慌てふためくのは、客の男ばかり。


少年は、一応、反省する素振りで頭を下げてはいるが


当然、それで事が収まるはずもない。







posted by 白黒ぼたん at 22:38 | TrackBack(0) | 日記
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