2022年11月09日

面白い話









「…じゃ、俺、寝るね。おやすみ……」


深夜の映画も終わり、後はよく解らない気の抜けた通販番組になったところで
イツキはソファから立ち上がる。
キッチンで水を飲んでいた黒川はちらりとそちらを見遣る。


「……イツキ」
「ん?」
「…俺に、何か話す事があるだろう?」
「無いよ」


そう言って、巣箱に入ろうとするイツキを、黒川は手で遮る。
キッチンの入り口で肩を抱くように身体を寄せる。


「……マサヤ、酔ってる?」
「…そうだな。……面白い話があるぜ?」
「………俺、もう、眠いんだけど……」


黒川は片手をひょいと伸ばし、キッチンの棚にあった酒のボトルを取り
もう片方の手で、イツキの手を引き、リビングのソファに連れて行く。
ソファに戻されたイツキは小さくため息を付き、大人しく、それに従う。

グラスを二つ並べ、酒を注ぐ。
黒川はそれを一気に飲み干す。
実際、この男が、酒の力を借りることは……稀だった。



「……今日、事務所に知り合いの男が来てな……
そいつの組事務所で…おととい、……連れ込んだガキが……変で………」



少しゆっくりとした口調で話すのは、酒によっているせいなのか。

イツキはと言えば、並んで座る黒川の肩にもたれ、静かに酒を飲み

黒川の話を聞いていた。






posted by 白黒ぼたん at 23:44 | TrackBack(0) | 日記
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