2022年11月10日

シリアスな話








「………道端で客取って、ヤクザの事務所に連れて行かれて…
名乗る代わりにヤらせて済ませる……なんて、ヤバい奴だよなぁ……」



黒川は男から聞いた話をざっとイツキに話す。
隣に座るイツキは顔色も変えずにそれを聞き、ふぅんと言って、グラスの酒を飲む。

目を合わせないのは後ろめたい事があるのか、それとも、何も感じる事が無いのか。

黒川はソファの背もたれに肩肘を乗せ、斜めに、イツキと向かい合う。




「………お前か?」




単刀直入に黒川が尋ねる。
イツキはチラリと横目で黒川を見て、すぐに視線を逸らせて


小さく、笑った気がした。


「………どうだろう…」
「どうだろうって、…何だよ。ヤった事も覚えていないのか」
「…そうしたんだったらさ……、何でだと思う?………わざわざ他所でさ、…仕事みたいなこと、したと思う?」
「そりゃぁ……、……ヤルのが好きか、……金が欲しいのか………」



イツキも身体を倒し、反対側の肘掛けにもたれ掛かる。
イツキと黒川はそう広くはないソファの端と端に構え、真ん中で、脚が重なり合う。



「お金。…欲しいよね。………俺さ、一人で暮らしたくって……」
「……ここを出たいなら…勝手にしろよ……」
「うん。……でも、それにはお金が要るよね……」






シリアスな話をしている…風にはお互い見せたくなくて
重なった脚を軽く動かし、小さな蹴りを入れて見せる。


黒川は、喉が渇き

酒が切れて来たのではないかと、慌てる。






posted by 白黒ぼたん at 22:59 | TrackBack(0) | 日記
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