2022年12月18日
今日、イチ
「…もう一回、骨つきカルビ。レバー。あと生中を二つ…」
「ああ、あと。ホルモン。タレは味噌で……、良かったか?イツキ」
イツキはジョッキを傾け残ったビールを飲みながら、佐野に「うん」と目で返事をする。
ビールも昔は、コソコソと隠れるように飲んでいたくせに、と妙に感慨深くなる。
佐野がイツキと出会ってから、もう5年…6年は過ぎようとしている。
ヤられて泣いてばかりだった華奢な少年も、ただの酒飲みに成長したのか。
「……何?佐野っち。……笑ってる?」
「ああ、いや。…ハハ。俺も歳取る訳だよなぁって」
「何、言ってるのさ。…お肉、焦げるよ?」
佐野はタバコを咥え、ライターをカチカチとやり、笑う。
イツキは佐野の目の前の肉もひっくり返してやりながら、それでも、楽し気に微笑む。
イツキにとって佐野は、特別な、馴染み深い男に違いはない。
時には騙されたり不意打ちに遭ったりして、酷い目にもあったが
汚れて傷付いたイツキに寄り添い、慰めてくれたのも佐野なのだ。
「……佐野っち、お皿。…お肉、入れてあげる……」
「ああ」
傍から見れば、まるで恋人同士のようにも見える二人は
それ以上に、深く、遠い、間柄だった。
「……まあ、さ。良かったよな、イツキ。
社長と、良い感じなんだろ、今。
なんか、ちゃんと、大事にされてるっぽいじゃん…」
「………うん」
イツキは素直にそう答えて
今日一番の笑顔を浮かべるのだった。
posted by 白黒ぼたん at 22:30
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