2023年01月23日

目論見通り









イツキがハーバルの仕事を増やしたい、新しい店舗の店長代理になりそうだと
そんな話をした時、当然、黒川は嫌な顔をした。

そもそも昼間の、カタギの仕事に就くような人種ではない。
週に数日、数時間ならば、まあ良い暇つぶしにもなるだろうと放置してきたが
そんな朝から晩まで仕事漬けの、そんな普通の生活などイツキに出来るはずが無い。
無用なトラブルを招くだけだと。


『…解ってる。…俺が、そんなタイプじゃないって事ぐらい。
…でも、今は、頑張りたいんだ。…ミカさん、助けてあげたい。
……駄目?……俺があんまり忙しくしたら、マサヤ、寂しくなっちゃう?』


セックスの途中で目を潤ませて、甘えた仕草で身体を擦り寄せ、そう言う。
これで断れば、まるで理由が、黒川が寂しいからという事になってしまう。

それに、イツキは少々忙しい方が余計な事を考えずに済む。
実質、二人は程よく離れた時間がある方が、お互い干渉し過ぎなくて良いのだ。


『………好きにしろよ』


と、黒川が言うのは、イツキの目論見通りだった。








朝。と言っても昼に近い時間。
黒川が目を覚ますと、すでにイツキは仕事にと出掛けている。

けれど夕方は、割と早い時間に上がれるらしくて、帰り道に黒川の事務所に寄る。

そこで仕事の愚痴をこぼしつつ、ソファでうたた寝などし
黒川の仕事が終わると……終わらなくとも、一緒に帰り、馴染みの焼き鳥屋に行く。


そんな日々を、割と黒川は楽しんでいた。






posted by 白黒ぼたん at 19:19 | TrackBack(0) | 日記
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