2023年01月31日

カフェみうら・1









ハーバルが入っている建物は6階建の古いマンションで、
イツキはいずれ、そこに部屋を借りたいな、などと思っている。

「でも意外と家賃、高いんだよ、ここ。こんなボロなのにさ」

と、店先に居座り長話をするのは、ハーバルの隣りでカフェを開けている
三浦という男だった。
歳は30歳半ば。おっとりとしたお喋り好き。勿論、ノーマル。
親の遺産で店を継いだがそんなに繁盛している風でもなく、やる気もないようだ。


「…三浦さん、お店戻らなくて良いんですか?」
「この時間は誰も来ないもの。夕方になるとね、常連さんが2、3人来るけどね。
君んとこも、よくこんな場所に店、開けたよね、実際どう?」
「うちは……もともと通販が主だったので。…名前を知って下さってる方が、来てくれるんです」
「ふーん」


三浦は棚に並んでいる試供品のクリームを手に塗り、くんくんと匂いを嗅ぐ。
奥で伝票の整理をしていたパートの横山は、少し嫌そうな顔でそれを眺める。
そう、悪い男ではないのだが、とにかくお喋りが多く面倒臭い。

ハーバルは、実際の客は少なくとも、商品の注文や配送の手配で何かと忙しいのだ。



「ミカ店長はもう退院したんでしょ?お店復帰、しないの?暫く安静なのかな?
君も若いのに大変だよねぇ。……そうだ、アレ、来た?
なんか、商店街のナントカ会の…、祭り代って言われたけど……」

「……三浦くん、店、やってないの?」




話の途中で、カフェの常連の爺が顔を覗かせ、三浦を呼ぶ。
三浦は仕方が無いなと言うふうに、渋々、自分の店に戻って行った。





posted by 白黒ぼたん at 22:26 | TrackBack(0) | 日記
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