2023年02月06日

カフェみうら・3







「おつかれさん」


ハーバルの閉店は少し早くて18時。
窓側のブラインドを下ろし灯りを消し、出入り口に施錠していると
イツキの後ろから三浦が声を掛けた。


「おつかれさまです。失礼します」
「店長、白菜漬け食べる?さっきお客さんに貰ったんだけど」
「………いえ、……食べないので……」


イツキは断ったつもりなのだが三浦の手には最初から、重たげなビニール袋があって
三浦はそれをイツキに差し出す。
グイグイと詰め寄られ、あまりむげに断るのも悪いと、イツキはそれを受け取った。


「ちょっとショッパイらしいけど、酒のアテにも良いでしょ。…ん、店長、飲めるんだよね?」
「……はあ、……まあ」
「今度一杯やろうよ。ウチの店でも良いしさ」
「………そうですね。仕事が落ち着いたら。じゃ、失礼します」


イツキはニコリと営業用の笑を浮かべ、ぺこりと頭を下げ、踵を返す。
一歩踏み出したところで、再度三浦が、後ろから声を掛ける。


「ああっ、待って待って、ビニール袋、漏れてるかも。これ、ホラ、二重にして…」
「…………はあ」


白菜漬けの袋から水気が滴っていたらしい。
三浦は慌てて、持ち合わせていたもう一枚のビニール袋を広げ、イツキが持っている袋の底に当てがう。




悪い人ではないのだ。確かに。
ただ、イツキには馴染みのない人種で、多少戸惑う。



「はい、これで大丈夫っしょ。一味振ると美味いからね」
「ありがとうございます」
「はーい。また明日ね」



三浦に手を振られ

イツキは白菜漬けが入ったビニール袋をぶら下げ

黒川の元へと帰るのだった。



  

posted by 白黒ぼたん at 23:29 | TrackBack(0) | 日記
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