2023年02月18日
面倒臭い奴
以前の百貨店では規定の制服があったのだが
新しい店舗で働くにあたって、イツキはスーツを新調していた。
別段、何かを指定されたわけでも無いが、まあ、気分的に。
銀座の老舗のテーラーで仕立てて貰う服を纏うと、否応なく気分が上がった。
黒の上下は……昔の仕事を思い出せる服装なのだけど
それでも一番、似合う、落ち着くスタイルでもあった。
「ホストみたいだよねー」
隣の暇なカフェの店長の三浦が、ハーバルのカウンターに腰かけてそう言う。
お客様と話がしやすい様にと設えた椅子に、そうやって長居されるのもどうかと
イツキは若干眉を顰めながら微笑む。
「……そうですね。でも、一番のスタイルでお客さまをお迎えする、という点では間違いはないかと
思いますよ。
三浦さんは…お客さまを、お迎えしないんですか?」
カウンターで伝票整理をしながら、やんわりと、イツキはそう言う。
三浦は、髪はボサボサ、カフェのエプロンを掛けたまま。
一応、コーヒーだけは、自分の店で落としたものを持参し、注いでくれた。
それで、帳消しになる訳でもないのだが。
「ウチは夕方からしか、客、来ないし。大丈夫、大丈夫」
「……はあ」
「それにしても、店長代理って、ホント……ホストみたい。そっち系だった?
いやいやいや、じゃないんだったら、そっち系が向いてると思うよ、ホント!」
悪意もなく他意もなく
三浦は、ただ本当に、ふわりと思った事を口にしているだけだったが
若干
面倒臭い奴の、予感は、十分にあった。
posted by 白黒ぼたん at 00:51
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