2023年03月23日
帰宅
イツキが部屋に戻ったのはまだ日付が変わる前だったが
すでに黒川は帰って来ていて、リビングで細かな作業をしていた。
テーブルには仕事の資料と、新聞。酒とツマミが乱雑に並ぶ。
「ただいま。ん、マサヤ、何飲んでるの?」
「……日本酒だ、新潟の。この間貰った……」
「……やだ!俺も飲みたいって言ってたやつじゃん」
イツキはキッチンから自分のグラスを取ると、黒川の座るソファへと向かう。
定位置の黒川の足元にペタリと座り、テーブルの資料を脇に寄せ、そこにグラスを置き
「注いで」と、黒川を見上げる。
「…………遅かったな、今日は」
黒川はふんと鼻息を鳴らし、イツキに酒を注ぐ。
別に、帰宅が遅いからと言って、怒っている訳ではないのだが。
「今日は店に松田さんが来てね。ご飯、食べて来たんだ」
「松田が?何の用だよ」
「仕事の用だよ。一応、ハーバルの関係者だもの」
「メシ…、だけか?」
一升瓶を手に持ったまま、黒川はイツキを見る。
イツキは酒の入ったグラスに口をつけながら、黒川を見る。
「………聞く?」
「………いや」
「…聞かないの?」
「わざわざ聞くことでもないだろう」
黒川はさして興味の無いフリをして、一升瓶をテーブルの脇に置く。
自分のグラスを取り、煽ってみせるのだが、それは殆ど残っておらず
慌ててもう一度、一升瓶を取り、自分のグラスに注ぐ。
ふいに、そのグラスをイツキが取り、邪魔にならないところに置き直した。
身体を捻り、黒川に向き直り、解り易い膨れっ面を見せる。
「もう! 聞きなよ。マサヤ。…いや、今日は別に何もなかったけどさ。
もうちょっと、気にしても良いんじゃない?」
そう言って、黒川に、しがみつくのだった。
posted by 白黒ぼたん at 15:08
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