2023年04月26日

コソコソ話








「……もう一度、あの辺り一帯を調べろ。
男は素人らしいが…目を付けられる以上、裏があるんだろう。
親戚と交友関係と。ギャンブルで借金があるとか、女関係とか……」

「へえ」





まだ日の高い内から黒川の事務所に呼び出された松田は、黒川の要求に、気の抜けた調子で返事をする。
その様子に黒川は一睨みし、不満げに鼻息を鳴らす。


「だいたい、お前の仕事だろう? 石鹸屋のケツ持ちじゃ無かったのか?
越して早々で、目ぇ付けられやがって……」

「いや、でも。黒川さん。…隣のオッサンが何かトラブってるかもって話だろ?
そこまでは俺だって感知できねぇわ。それにまだ何も……」

「起きてからじゃ遅いだろうが。……まあ、構わんが……。面倒は持ち込むなよ」




松田に指示を出すだけ出して、黒川は煙草に火を付け、デスクに向かってしまった。
今度は松田が小さく溜息をつき、部屋の隅の書棚の前にいた一ノ宮と顔を見合わせる。

一ノ宮は困ったような呆れたような、申し訳ないといった様子で、ぺこりと頭を下げる。
松田はつつつと一ノ宮の側まで行き、小さな声で耳打ちする。




「…まあ、良いんだけどさ。俺の仕事だしさ」
「……こちらでも調べてはいますが…、すみません。社長が面倒をお掛けしています」
「いや。でもさ、俺に任せちゃっていいの?俺だってイツキくん、狙ってるかもよ」
「そこは……、信頼しているのでしょう。意外と社長は松田氏を気に入っているのですよ」



「………聞こえてるぞ」








一ノ宮と松田のコソコソ話は、黒川の耳に届く。

まあ二人とも、隠そうとも思ってはいなかった。






posted by 白黒ぼたん at 08:57 | TrackBack(0) | 日記
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