2023年05月18日
想定外
三浦には
ちょっとしたチンピラ風情に付き纏われる心当たりがある。
自分の店を留守がちにするのも、ハーバルに入り浸るのにも、その辺りの事情で
今日の飲み屋の、見掛けない新顔も……自分が関係することなのかと思っていたのだが
「……飲み過ぎだろ。もう、帰るぞ、イツキ」
カウンター席に座りこちらの様子を伺っていた男はイツキの知人なのか。
イツキの腕を掴んで、そう言う。
イツキはそれまでその男の存在などまったく気付いていなかったようで、
顔を上げ、男の顔を見て、酷く驚いている様子だった。
「……あれ、ただの一般人だろ?…お前、どこでもオトコ、タラし込むの止めろよな…」
「……タラしてないよ。…仕事終わりに一杯、飲んでただけだよ」
「一杯じゃねぇし。…そのまま、持ち帰られる気マンマンだったろ?」
「違うし」
男は、近くのパーキングに止めていた自分の車に、イツキを乗せる。
途中で買ったスポーツドリンクをイツキにに渡し、ハンドルを握り、呆れたように大きなため息を付く。
「……違うし。そんなんじゃないし。……だいたい、……何で、佐野っちが来てんのさ?」
「知るかよ」
イツキは
馬鹿だが、そう、馬鹿でもない。
『ハーバル近くの居酒屋で、三浦さんと、軽く飲んで帰ります』
と、事前に黒川に連絡をしていたのだ。
特別帰りが遅いとか何か……、最悪、迎えに来て貰るだろうと……、思っていたのだが
それに、佐野が駆り出されるとは、少々、想定外だった。
「社長に言われりゃ仕方ねぇだろ。…ほら、シートベルト付けたか? 行くぞ。
……ったく。……ヤリマンが………」
佐野のささやかな愚痴は、意外に、イツキの耳に届いていた。
posted by 白黒ぼたん at 14:58
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