2023年05月20日
仏頂面
助手席のイツキは仏頂面で、窓の外ばかり眺めている。
運転手の佐野は不満を抱えながらも少し言い過ぎたか、と、ハンドルを握りながら反省する。
イツキは社長の「女」で
自分は社長の手下なのだから
こうやって、迎えに行くのは当たり前の事だ。
…西崎が囲っている店の女の子の送迎も、良くある、別に、何のこともない。
それが、こと、相手がイツキだと……どうもささくれ立つ。
まして、飲み過ぎ、ほんの少し突いただけで何かが漏れ出しそうな身体を
隣に置いて、平常心ではいられない。
「………社長が…、ちょうど俺ん事務所にいた時で…、まだ仕事がバタついててよ……
俺に、迎えに行けって……」
「…ふぅん」
「まあ、いいタイミングだったろ?お前、あのまま、ヤラれるコースだったろ?」
冗談めかして言う佐野に
イツキは仏頂面のまま、ちらりと、視線だけを佐野に向ける。
相変わらずの……、いや、自分が知っている時より遥かにヤバい色香に
佐野はごくりと生唾を飲み込む。
以前にアレコレ、イツキと関係のあった自分に、こんな用事を頼むという事は
多少、間違いがあっても構わない、という事なのかと………佐野は思う。
イツキとの仲は、社長も黙認しているのだ。
面倒を掛ける、その手間賃と、……きっと大目に見てくれる。…ような気がする。
車は都心に近付き、それと同時に
道路沿いにキラキラと、2人を誘うホテルの看板が瞬いていた。
「……俺、……しないよ? ちゃんと帰ってね、佐野っち」
posted by 白黒ぼたん at 21:30
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