2023年05月26日

夜の雰囲気








寝室に入り、ベッドの毛布に潜り込み、ぎゅっと目を閉じても
イツキはなかなか眠りにつくことが出来なかった。
考えてみれば、久しぶりの、夜の雰囲気。
三浦も、佐野も、すぐに身体の関係になる訳ではないのだが
……そうなるかも知れない、という可能性だけでも
イツキを乱すのには十分だった。


イツキが、例の「仕事」をしなくなってもう大分経つが
あの時の記憶も感覚も、まだ嫌というほど身体に残っている。
決して、良いものではない。けれど
身体の芯まで熱く溶け、疼き痺れる……あれは、やはり甘美な蜜で
時折、どうしようもなく欲しくなり、困る。


直接触っては、何やら負けた気分になるので
手を、太ももの間に挟み、もじもじとする。
こんな事なら、佐野としてしまえば良かったし
あと暫く黒川が帰って来なければ、再び夜の街に出掛けてしまうのも悪くはない。


適当な男を見つけて、ああ、もう、誰でもいい。
腕を掴まれ、激しく乱暴に身体を開かれ、勢い貫いて欲しい。
痛みは、快楽と裏表で、酷ければ酷いほど、いい。
泣き叫ぶ声と一緒に、自分の中のドロドロとした膿を、全て出し切ってしまいたい。



「………マサヤ、早く帰ってくるといいのに……」



イツキは切実な言葉を溢し
身体を丸めて、ただただ、欲望をやり過ごした。







posted by 白黒ぼたん at 23:39 | TrackBack(0) | 日記
この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/190369104
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック