2023年07月07日
石鹸の匂い
正直、黒川はイツキに腹を立てていた。
石鹸屋だか何だか知らないが、勝手に遊んでいる仕事ごっこで
さも自立した風に偉そうな顔をして
そのくせ、揉め事を持ち込み、人に片付けてくれだの言い出す始末。
『馬鹿か、お前は』と一蹴すれば
唇を尖らせ、拗ねた素振りを見せ
『……じゃあ、松田さんに相談してみる…』
と言うのだ。
最近、少し、甘やかし過ぎていると黒川にも自覚はある。
つけ上がり、生意気になって来た。身の程をわきまえろと、思う。
無性に腹が立ち、その後はロクに喋りもせず、苛ついた気分のまま帰宅し
少し痛い目に遭わせた方が良いのではないかと、寝室に向かった。
終わってみれば、イツキは黒川の腕の中で小さくまとまり
「……今日のマサヤ、やだ。おれ、死んじゃう…」と、湿った声を洩らし
まんざらでも無さそうに、さらに身体を擦り寄せてくる。
黒川はふんと鼻息を付き、イツキの細い肩を抱く。
イツキの髪の毛からはハーバルの石鹸の良い匂いがした。
posted by 白黒ぼたん at 23:57
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