2023年07月11日
小康状態
それからまた数日間、三浦は姿を見せなかった。
騒ぎを起こし、叱られると暫く身を潜める。
それがもうお決まりのパターンのようだった。
ただ、今までは三浦は、自分の店は少しの時間だけでも開けていたのだが
今回はそれも無いようだ。
「カフェみうら」の入り口には『しばらく休業』と書かれた紙が貼られたまま
真っ暗な店内を常連客らしい初老の男性が覗き込んでいる姿を、時々見かけた。
「……いなきゃいないで、少し、寂しくなりますよね」
パートの横山はふと仕事の手を止め、ハーバルの外の通りを眺め、呟く。
本当に、居れば居たらで面倒なのだが、まるで居なくなってしまうと寂しく感じる。
イツキは「……そうだね」と答え押し黙るが、いやいやという風に頭を振る。
三浦が抱えていたトラブルの事情は解ったが
それに積極的に関わる訳でもなし、まして、当人が居ないのだ。
これ以上、気にしていても、仕方がない。
「……まあ、またひょっこり顔、出すんじゃないかな……
それよりも、仕事。仕事。宅急便、来てたでしょ?」
「そうなんです。本社でボトルのサイズ違いが3箱あって、どうにかして欲しいって…」
「どうにかって言われても…そんなに売れる訳無いじゃんねぇ……」
イツキはわざと明るくそう言って、商品を並べる棚の整理などをしてみる。
店の外の道路を黒い車が通り過ぎ無駄にドキリとするが
それは別に、何も関係のない車だった。
posted by 白黒ぼたん at 13:47
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