2023年07月20日
とばっちりイツキ・2
「嫌です」
二条虎松の誘いを、一度はきちんと断る。乗る、理由は無い。
「ちょっと、話し、しよう」
「……俺は、話しなんて無いです」
「まあ、そう言わずに…」
この日の男は一人だった。
自分で車を運転し、開けた窓から身を乗り出し、イツキを誘う。
イツキは三浦のカフェの店先と車に挟まれそうになりながらも、脇の隙間へと身体を向ける。
「実は今、俺らと一緒にいるんだよね、…三浦くん」
わざわざ敬称を付けて呼び、それを可笑しそうに言う。
しばらく姿を見掛けなかった三浦は、どうやら、ついに男たちに捕まったようなのだ。
「……俺には、関係ない話しでしょ?」
「そう? ご近所さんだし、仲、良さそうじゃない?」
「特に良くはないですよ」
「ふうん。てっきりイイ仲なのかと思ったけど。
ウリで街中立ってても、見境なしって訳じゃないんだ?」
二条の言葉に、一瞬、イツキも反応してしまう。
言葉と、どこか小馬鹿にしたうすら笑みで、どうやらこの男は自分の素性を調べたのだと、知る。
何を、どこまでかは解らないが…とりあえずそれだけでも、あまり聞こえの良い話しではない。
「…ハーバル、だっけ? あの店でも売ってるの?自分? はは、そんな店?
その辺、引っくるめて、ちょっと話し、聞きたいんだけどなぁ」
「どこまで知ってるんですか?」
「まあ、立ち話もなんだし。…乗りなよ」
二条は顔をクイと動かし、後ろの座先を指し示めした。
自分の素性と、今のハーバル。
その辺りのことを突かれると……さすがのイツキも、弱い。
posted by 白黒ぼたん at 22:21
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