2023年07月31日

ばっちりイツキ・5








部屋は、これまた殺風景な洋室。三浦はぽつんと置かれたパイプ椅子に座らされていた。
手首の片方にだけ手錠が掛けられ、パイプ椅子に繋がれている。
その外では常に誰かしらが見張っていて、逃げ出せる状況ではない。

三浦は一昨日の夜からここに連れて来られていた。





「……あのさぁ、いくらこうされたって、俺の意思は変わらないよ?
それに、コレ、犯罪でしょ?脅迫でしょ? ヤバいでしょ?」


部屋の扉が開き、人の気配がすると、三浦は何度も言い続けた文句を繰り返す。
顔を覗かせた二条は、三浦の態度が一向に変わっていない事にため息をつく。


「ウチとしても困ってるんだよ。これでも出来る限り丁寧にしてるんだぜ?
あんな狭い土地、売ったって構わんだろ? なあ?」
「……嫌なもんは嫌なんだよ」
「解らねぇなぁ…、タダでくれって言ってる訳でも無いのになぁ」


「なあ?」と、二条は同意を求めるように、視線を横に向ける。
二条の隣にもう一つの人影が見え、三浦は心底、驚いた。


「…イツキてんちょ…、なんで?」
「……なんでだろ。……もう。…ね」


三浦の問いにイツキ自身も答えられず、困ったように呆れたように、ふうとため息をついた。
それでも、取り合えず三浦が無事でいたことにホッとする。

その、少し力の抜けたイツキの肩を、二条はまるで親しいと言った風に抱き寄せる。



「なんで、は無いだろ? あんたを説得しに来てくれたんだよ?
本当に、イイ子、だよなぁ…」


腕に力を込め、さらに顔を近付け、二条はそう言う。
手付きがイヤラシイと思ったのは、イツキだけでは無かったようだ。






posted by 白黒ぼたん at 20:22 | TrackBack(0) | 日記
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