2023年09月12日

とばっちりイツキ・16








「………はい。二条です。お疲れ様です。……はい」

ケータイは上との連絡用のものだった。
二条は落ち着いた声で応対し、その様子を派手な上着の男も見守る。
手にはまだナイフが握られたままだったが、すぐに刺される心配は無さそうだった。

「………はい、…………えっ…」

二条は相槌の後、少し驚いた声をあげ、それからイツキの方を見た。



そしてようやく、イツキが、手を出してはいけない相手だったと知ったのだった。






その後は驚くほど簡単に、イツキと三浦は解放され、建物の外へと出された。
あたりは街灯も少なく場所も解らず。
二人は半ば呆然とし、とりあえず、道路脇の植え込みの段差に腰掛ける。


「………なん、だ? 何で急に……」
「色々、連絡が付いたんだと思います。それより三浦さん、大丈夫ですか?」
「俺?俺なんかどうでもいいよ、………イツキてんちょの方が……」


三浦は隣に座るイツキに向き直り、話を続けようとするのだが
口から漏れるのは意外にも嗚咽で、目からはボロボロと涙を溢していた。


「………ごめん。俺のせいで……酷い目に………」


肩を振るわせ泣き崩れる三浦をイツキがどう慰めようかと迷っている内に




目の前の道路に車が通り、停まる。

それは助けに来たには遅過ぎる、黒川だった。





posted by 白黒ぼたん at 22:12 | TrackBack(0) | 日記
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