2023年09月19日
とばっちりイツキ・終
三浦は、突然解放された事も丁度目の前に迎えの車が来た事も
まだ事態が飲み込めず呆然としていた。
それがすべて、イツキが手を回してくれたことだと察すると、
ただただ頭を下げ、迷惑を掛けてすまなかったと詫びた。
「…まあ、細かい話はまた今度。…病院まで送りましょう」
そう言って一ノ宮は、イツキと三浦を車の後部座席に乗せる。
三浦は、パイプ椅子が繋がったまま腕を振り回していたので、実は骨が折れていた。
座席に深く腰を下ろすとルームミラー越しに黒川と目が合う。
その瞬間、三浦は、今回の一件の中で一番の殺意を感じ、背筋が凍った。
「……ごめん。マサヤ。……ありがと」
やっと一息ついたイツキが小さな声でそう言う。
イツキは黒川の真後ろに座っているため、お互いの顔は見えない位置だった。
それでも、黒川が呆れたように鼻息を鳴らすのは解った。
「……ヤられたのか」
「…あー、ん、…ちょっとだけ。でも、三浦さんが守ってくれたんだよ」
「…もともとの原因だろうが。……それなりの落とし前は付けて貰わないとな…」
そんな言葉に三浦は震え、イツキはそっと目配せし、大丈夫ですよと微笑む。
……つい先刻まで男に暴行を受け犯されていた本人だというのに、イツキにはもう、その影は見えなかった。
「……イツキてんちょ。……本当に、ごめん。俺、何でもするから、何か……」
「でも、俺。ちょっと、嬉しかったです。だから、平気です」
そのやりとりを聞いて
助手席の黒川はまたつまらなそうに
フンと鼻息を鳴らした。
posted by 白黒ぼたん at 11:03
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