2023年11月14日

休暇・終








「…起こしてくれても良かったのに」


風呂上がりにそのまま寝てしまい、次に目を開けた時はもう翌朝だった。
イツキはせっかくの夜を無駄にしたと、不満げに口を尖らせる。

黒川はすでに着替えを済ませ、ネクタイまで締めていた。


「…それだけ休めたって事だろう。…それが目的なんだから良いじゃないか」
「……でも」
「どうせ、ヤれなかっただろ? ケツが痛いんだもんな」


…セックスが出来ないイツキは、一緒に過ごす意味がないとでも言うのか。
冗談半分。馬鹿にしたように黒川はハハハと笑う。
イツキは不機嫌な顔をさらに顰めて、枕を一つ黒川の方に投げると
そのまま掛け布団を被り丸まってしまった。



「…拗ねてないで早く着替えろ。…下で朝メシ、食っていくぞ」

「……せっかくの、お出かけだったのに……」




小さく消え入りそうなイツキの声が聞こえた。




黒川は床に落ちた枕を拾い、それをベッドに戻す。そして
イツキが入っている布団の膨らみを、ぽんぽんと叩く。



「こんなところぐらい、いつでも、連れて来てやるから」



勿論。行為云々が理由でイツキを起こさなかった訳ではないのだが。

それでも、ただただ、一緒に過ごす時間だけが欲しいのだと


イツキのその想いが、いじらしく思えた。






posted by 白黒ぼたん at 00:44 | TrackBack(0) | 日記
この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/190651236
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック