2023年11月19日

忙しい日







イツキがハーバルに出社したのは翌日の午後になってからだった。
留守を任されていたパートの横山は、その間の業務をざっと報告し
部屋の隅に山積みになっている、本社から届いた段ボールを指差した。

今週中にすべてのラベルを貼り替えたのち、小分けにして送り直さなければいけないそれを
ため息まじりに確認していると、
気配を察したのか何なのか三浦が挨拶に訪れた。
腕はやはり折れていたようで、仰々しく包帯を巻かれ、首から吊っていた。

「……イツキてんちょ。……おれ、その、何て言っていいか……」
「…何も言わなくていいです。…横山さんもいますから」
「本当に申し訳ないことをした。どんな詫びでもする」

深々と頭を下げる三浦をなんとか宥め、話は後でするからと、とりあえず帰ってもらう。
…三浦が一体何をしでかしたのだろうかと、横山は興味津々で2人を眺めていた。




三浦が帰ってからものの5分も経たない内に、また扉が開く。

入って来たのは、松田だった。



「イツキちゃん。一ノ宮氏から話は聞いたよ。俺の管理不足だ、…すまない」
「…松田さんの責任では無いと思いますよ」

どうやら事情を知っているらしい松田は、そう言って、頭を下げる。
イツキは松田を見て、横山を見て、また松田を見て
…横山がいる前で、もうこれ以上は喋らないで欲しいと、手をぱたぱたと振る。
けれど、松田にはイツキのジェスチャーは通じないようだった。

「いや、ここの店舗の手配をしたのは俺だよ。一帯の関係者は洗ったはずだったが…
…とにかく、ちょっとカタを付けて……」
「松田さん。その件は後でゆっくり話ましょう。今はおれ、仕事があるんで……」


そう言ってイツキは半ば強引に、松田を外に押し出した。
ハーバルの店の外で松田は一度、イツキをぎゅっと抱き締めて
また夜に連絡する、と言って帰って行った。



ふう、と大きくため息をついて、イツキが店内に戻ると

さすがに何事かと横山が、イツキをじいっと見つめるのだった。






posted by 白黒ぼたん at 00:25 | TrackBack(0) | 日記
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