2024年02月23日
内緒の話
その日
黒川が珍しく早い時間に部屋に戻ると
イツキはキッチンで、鼻歌混じりに鍋を掻き混ぜていた。
テーブルには他にもデリカの惣菜やサラダ、良いワインなどが並ぶ。
「ミカちゃん、産まれたって。女の子。
すごいよね、俺、知ってる人が子供産むなんて、初めてで…
ちょっと感動した」
「ミカ?……ああ、石鹸屋の女か。…ふぅん」
黒川にすれば別に関係のない話。
適当に相槌を打ち、ネクタイを解き、ソファに座る。
まあ、それでも、イツキが興奮するのも多少は解る。
本来、身体の交わりは、そのために必要なものなのだろうがそれ以外で行使している身としては…
思うところは、ある。
「ふふ。なんか、嬉しくて…奮発しちゃった。
ビーフシチュー、温めるだけだけど…A5ランクの牛肉なんだって!
…今日、マサヤ、早く帰って来てくれて良かった。
…本当は電話しようかと思ったんだけど。……良かった」
イツキは始終にこやかで。
温めたシチューを皿に盛り、それをテーブルに運ぶ。
黒川は、ワインボトルの栓を抜き、グラスに注ぐ。
隣に座ったイツキが、ミカの、産まれたての子供の写真を見せてくるのを、大人しく眺める。
これで暫く
イツキも、そちらに気が行くだろうと
黒川が思ったのは、内緒の話。
posted by 白黒ぼたん at 23:51
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