2024年02月27日

そういう事









ハーバルの事務所に松田が来ていた。
あれこれ、仕事に関係がありそうな話をするのだが
単純に、イツキと話がしたいだけだった。

それでも、ミカが無事に出産を終えた事を伝えると
意外に素直に喜び、穏やかで優しい空気になる。

子供が産まれるというのは、そういう事なのだろうと、イツキは思った。



「会いに行くの? 病院…は、さすがにアレかな。でも、落ち着いたら行くでしょ?」

そう尋ねる松田に、イツキは少し、言葉を詰まらせる。

「ん。……でも、俺とか……駄目じゃないかな」
「なんで?…車で送ってあげるよ?」
「俺、そういうの……向きじゃ、ないじゃん?……あんまり……」


『きれいじゃないから』と言いかけて、さすがにそれは声には出さなかったが
そういう事をイツキが気にしているのは、松田にもなんとなく伝わった。


自分の過去を卑下する訳ではないのだけど
無垢な赤ん坊と対面するのは、いささかハードルが高い。というのも解る気がする。



「……そんなの、気にすることじゃないと思うぜ?
それを言ったら、俺だって、ロクなもんじゃ無えだろ」

「ん。まあ、そうなんだけどね…」


そう言って、イツキはふふふと笑った。







posted by 白黒ぼたん at 21:09 | TrackBack(0) | 日記
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