2024年10月06日

お喋りな一ノ宮・5








確かに。
高校2年生の終わりに行った修学旅行で、黒川に頼まれ、誰かのお見舞いに行った。
黒服の男達が警護する中、物々しい雰囲気だったのを覚えている。
……黒川は…、何と言っていただろうか……、『昔、世話になった人だ』と言ったような……
自分にはありがとうと、……珍しく、感謝されたような気がする。




「……そうなんだ。
……なんで、俺に、……行かせたんだろう……」


昔の記憶を辿り、イツキはふうとため息を吐く。
事情があるとは言え、病身の身内の見舞いに自分を行かせる、その理由が解らない。


「それは勿論。それだけイツキくんの事を特別に考えているからでしょう。
……あの人は意外と、イツキくんが思うずっと以前から

イツキくんのことを好いているんですよ」

「…………すッ」






そこまで話し終わったところで丁度、黒川が事務所に戻って来た。
やれやれといつもの悪態を吐き手荷物を机の上に投げ、ソファの、イツキの隣に座る。


「クソ。話の通じない奴らだ。やはり上から話を通さないと駄目だな。
一ノ宮、明日、もう一度行く。宮原のジジイに連絡しておけ。

イツキ、お前はいつもヒマそうでいいな。明日、一緒に来るか?
ジジイのご機嫌でも取ってくれよ、得意だろう?………はは」



黒川はネクタイを緩めながら、そう話し


鼻で笑ったところで


一ノ宮とイツキの様子が、何か少し違うことに気が付いた。






posted by 白黒ぼたん at 23:28 | TrackBack(0) | 日記
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