2025年05月28日
焼肉・9
会計に立ったのは一ノ宮だった。
黒川は喫煙ルームで一服していた。
イツキはトイレを済ませ、レジの前にいる一ノ宮の隣に並ぶ。
「……珍しいですね」
「…え?」
「社長が、あんな事を言うのも……」
お釣りと領収書を受け取りながら、一ノ宮が言う。それは半分、自分自身に語りかけるような口調だった。
「本当に、あなたの事を想っている。…変わりましたね…」
「…それは、…良い事?」
「勿論ですよ」
イツキの手に、貰った飴玉を乗せて、一ノ宮はそう言って笑う。
「あなたも社長も、色々あり過ぎましたからね。……わだかまりが何も無い、訳には行かないでしょう。
ましてや、イツキくんはまだ若い。心と身体が擦り合わないこともあるでしょう」
「…うん」
「…はは。まあ、その辺りのことも含めて…、また話をしましょう」
「…その話、マサヤがいない時の方がいいな…」
丁度その間合いで、黒川が奥から出てくる。
何やら神妙な面持ちの2人に、違和感を覚える。
「……なんだ。俺の悪口でも言っていたのか?」
そう言う黒川に一ノ宮は笑って、「まあ、そんな所です」と返して
「では、私はここで失礼します」
と、頭を下げ、イツキには軽く手を振り、先に店を出て行くのだった。
posted by 白黒ぼたん at 00:04
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