2009年01月17日

迷惑な招待状

あまりに心配事が多すぎて、どこから手をつけていいのか解らなくなる。
酒を飲むのも、自分で自分を慰めるのも、いい加減飽きてしまって
点けっ放しのテレビの画面をぼんやり眺めて、何度目か解らない溜息をついた。
「溜息をつくと幸福が逃げる」と、何処かの誰かが言っていたけど
これ以上逃げる幸福なんて、俺の中の、どこにも無かった。

マサヤも一ノ宮さんも、佐野っちも、誰にもずっと、電話が繋がらない。
でもって、今日の昼間、俺のケータイが切れた。
俺のケータイはマサヤの名義で、料金もマサヤが払っていると思うんだけど…

直接話を聞きたくて、マサヤの事務所まで行ってみたのに
そこはもう、もぬけの空で、誰も、何も、俺に繋がるものは無かった。
俺だけ、世界に取り残されたみたいで、怖くなって
慌ててウチに帰ると、マンションに「招待状」が届いていた。


嘆きにも似た溜息をもう一度ついて、テーブルに置いたそれに目を落とした。


今日の日付と、一時間後の時刻。どこかの住所と、「来い」、それだけ。
それは下世話なポルノ写真よりも酷い、俺の写真に書かれていて
通る人、誰もが目に付いてしまうような、マンションのエントランスと郵便受けと
エレベータの中と、廊下と、部屋のドアに、貼ってあった。

全部取るのが大変だった。


「…何で…俺、こうなっちゃうんだろう…」

鼻がツンとなって、押さえた手が、ガタガタと震えていた。
このままじっとしていたって、どうせ涙が零れるだけなので


コートを羽織って外に出る。
迷惑な招待を受けてやるために。


posted by 白黒ぼたん at 00:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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