夜のネオンが瞬く通りからは外れた、幹線道路沿いの、殺風景なオフィスビルだった。
いくつかの企業が入っているのか、入り口には小さく名前が書かれた看板が掛かっていて
…そのどれだかが解らなくて、迷う。
『来たけど、解らなかった』
と言って、このまま帰ってしまおうかと本気で考えていたら、突然後ろから腕を捕まれた。
「…っ」
「よ、久しぶり。…こっちだぜ」
見覚えの無い男は何故だかそう声を掛けて、俺の腕を引く。
通路の奥に小さなエレベーターがあって、それに乗せられた。
「よく来たなぁ、お前。さすがに度胸、あるのな」
「…あんた、誰?」
「あー? 覚えてねーかー。ま、しゃーないかー。お前、かなりブッ飛んでたもんなー」
話の途中でエレベーターが、5階で止まる。
5階の表示にはピンクの可愛い字で「桃

「…会社?…何の?」
「エロビデオ屋」
「あ、そう…」
「お前のテープもあるぜ?見る?」
「…見ないよ」
解りきった応答に、男はヒッヒッと声を上げて笑った。
多分、この間、レイプされた時に…あの写真と一緒にビデオも撮られていたんだろう。
この男は、その場所にいて、それを見ていたか、俺を犯していたか…
自分の身体が自分の知らないところで勝手に扱われている事は、もう、慣れっこだったけど
それでもむせ返す吐き気を堪えながら、案内されるまま、奥の部屋に入って行った。