2009年04月12日

アル中イツキ

リョーコさんは朝食を食べるとフラリと出かけて
夕方になると、またフラフラ帰って来て
馬鹿に明るく振舞って、晩ごはんを食べて、お風呂に入って寝る。
そんな日が何日か続いていた。

多分、毎日、自殺をしに出掛けているんだろうけど…まあ、いいか。

俺はと言えば、毎日、有り得ないくらいにゆっくりと過ごして、身体の傷も癒えて
フツーにご飯も食べて、少し、顔がふっくらして来た感じがする。
心も身体も落ち着いてくると、この先、どうなるんだろうと、不安が波のように襲ってくる。
マサヤから離れて、マサヤがいなくて、俺は1人で生きて行く事って出来るんだろうか…

「…マサヤがいないと…」

畳の部屋に寝っ転がって独りごつ。
窓の外から射す西日も、生ぬるい初夏の風も、平和過ぎて、俺には似合わない。

「…マサヤがいないと…、ビールも買えないじゃんか…」



一応、未成年の俺は、店でアルコールが買えないらしい。
それでもウチの近くのコンビニなら、なんとか誤魔化すことも出来たけど、こんな田舎の観光地にある小さな商店だと、それも出来ない。
リョーコさんも真面目ぶって、俺に酒を飲ませてくれない。…自分はこれから死のうとしてるくせに…

どうにもならないと解っていても、どうにも口寂しくて、旅館の外に出た。

駅前にある土産物屋の前にウロウロしてみる。

丁度、そこに、大学生風の男が数人、買い物に来る。

俺は駄目元で…、俺の代わりにビールを買ってくれないかと頼む。

「何?ビール飲みたいの? 駄目だなー、ガキのくせに。はっはっは…
まあいいけどさ、何だったら、俺らんトコで一緒に飲む? すぐ傍だぜ?」

その誘いに俺は「うん」と返事をして
つい、うっかり


仕事用の笑みまで浮かべてしまった。





posted by 白黒ぼたん at 00:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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