指定されたホテルは格別に良いランクでは無かったけれど、それでも最上階のスイートルームともなれば話は別で
エレベーターを降りて、そのフロアに入った時から、違う空気が流れた。
いやに毛足の長い絨毯は、ふかふか過ぎて足が引っ掛かるし
無造作に置かれた壷とか、絶対に近寄ってはいけない雰囲気を持っていた。
ああ…俺、こんな場所に…
ラーメン食べてから、来るんじゃなかった。
なんて、暢気に考えていた。
「仕事」をするのは久しぶりだった。
去年、高校生をやっていた時には、それでも3日に一度は呼び出されていたのに。
その回数が減って、代わりに、マサヤが毎日のように部屋に来ていたのは…どうしてだったっけ。
学校でレイプされたからだっけ?同じクラスのユータと、セックスしたからだっけ?
学校はそれなりに楽しかったけれど、俺が何かに楽しいのは、マサヤは気に入らないらしい。
朝も夜もなく、俺の身体を独占したかと思えば、干からびるほど放置して
それでいてまた、他の男に抱かせるんだから…
もう、訳わかんないよ。
「よく来たな、イツキ。久しぶりじゃねぇか。なんだ、少し、背、伸びたか?」
部屋に入ると、前にも何度か相手をしたことのある男が、上機嫌で俺を迎え入れた。
気安く肩を抱いて、親しげに髪を触る。
そのままソファに座らされて、目の前のグラスに酒を注がれる。
いきなり、ブランデーのストレートはキツ過ぎるけど、俺にそれを断る権利は無い。
「まったく。黒川の奴、出し惜しみしやがってよ…、…会いたかったんだぜ?イツキ…」
隣に座った男はそう言って俺の膝をぽんぽんと叩きながら、その手を…つつ、と上に滑らせていく。
それくらいの事で表情を変えるつもりはないけど、男がそれを待っているので、とりあえず嫌そうな振りをする。
指先が少し、脚の中心に触れて、虫唾が走った。
「お前も俺に会いたかったよな?なあ?…俺のチンポ、咥えたかっただろう?……そう言えよ、イツキ」
男は手に強弱を付けながら、上目遣いで俺の表情を探る。
俺は精一杯恥らいながら、その返事を、蚊の鳴くような声で呟く。
声が掠れて、震えていたのは
男を喜ばせるための演技で
久しぶりの仕事に緊張したから…じゃ…ないと…思う。
2009年05月18日
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