2009年08月07日

イツキの憂鬱




自分が綺麗な仕事をしているとは思わない。
他人が知ったら、軽蔑して嫌悪されて…当然の事をしていると思う。
だからって初対面の男に、あんな顔をされる覚えはない。
俺が、どんな事情でこんなコトをしているか、知らないくせに。



「…一ノ宮さん」
「はい?」
「今、事務所に…木崎とか言う男がいたけど…誰?」
「木崎?ああ、木崎くんね。須藤組の御曹司ですよ」
「その御曹司が、どうしてマサヤの所に来たの?」
「まあ、修行みたいなものでしょう。須藤さんと社長は昔からの付き合いですから。…彼が何か?」
「…ううん。別に…」


車の中でそんな話をして、後は窓の外の景色に目をやる。
都心の中でも静かな一角に入って、行き先が、俺の苦手な料亭だという事が解った。
この場所で会う客は決っていて、金も権力もある60過ぎのジジイで…
酒の肴と称してはいつも、酷いお座敷芸を強要される。
欄間に吊るされて、穴という穴に管を通されて、そこら中を水浸しにして
空になった身体の中に、イロイロ詰め込まれて、またそれを出して…

「…あ」
「どうしました?」
「…一ノ宮さん…。…薬局、行くヒマ、ある?」
「…大丈夫ですよ」


朝から自分が食べた物をざっと思い出して、自分の中がどんな状態なのかを計算する。
薬局に行って、グリセリン買って、トイレに寄って…と、仕事の段取りを、普通に考える。
ふと、頭の隅に、木崎の蔑んだ笑みがが浮かんで

すごく、すごく、すごく

気が、滅入った。



posted by 白黒ぼたん at 00:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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