2010年01月20日

解らない人





次の日の昼前に、本当に木崎さんが来た。
両手に2つ、スーパーのレジ袋を持って
部屋に入るなりすぐにキッチンへ向かって
買って来たらしい食材を、冷蔵庫に入れていた。
俺はまだ眠りの途中で、たまたまトイレに起きただけなのに
木崎さんは「何か、食うか?」とか言って、やかんを火に掛けた。
…この人、本当に…ヤの付く職業の人なんだろうか…と
まだ覚めない頭で、ぼんやりと考えた。

俺の事は、嫌っていたはずなのに…、好きとか言ってみたり。
そのくせ、酷くキツイ言葉を言ってみたり。
一度、したくせに……それっきり、何もないし。
……よく解らない人。

「どうした?」
「……俺、別に…。こんな事して貰わなくても平気だけど。…マサヤがいないのなんて、いつもだし…。ご飯なんて、勝手に食べてるし」
「…そうだな…」

木崎さんは、自分でもどうしてこんな事をしているのか、解っていないみたいだった。

「…まあ、今日は俺もヒマだし。たまには…ちゃんとメシを食うのもいいだろう?」
「…でも」
「コーヒーは?砂糖とミルクは?」
「…俺、牛乳だけ、少し入れて…」
「ああ」

手際よくコーヒーを入れて、キッチンのカウンターに置く。
仕方なく俺はスツールに腰掛けて、そのコーヒーを頂く。
木崎さんもコーヒーを飲みながら、トーストにベーコンやらチーズを乗せて
それをオーブンに並べていた。

「イツキ」

そうしながら、ふいに声を掛ける。
俺はまた何か怒られるのかと思って、少し、ドキリとする。

「……正直。自分でもどうすれば良いのか、解らない。…お前は、社長の物だし」
「どうすればって…。…好きにすればいいじゃん」
「だから。…それが解らないんだろう」
「…ヤリたいの?」
「そんな話じゃないだろう!」

そう言って、木崎さんは声を荒げた。


やっぱり、怒られた…と、俺は思った。




posted by 白黒ぼたん at 23:28| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記
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