2010年07月17日

迷い猫イツキ・2





野宿をするにはいささか寒い季節。
少しでも暖かくなるようにと、イツキは肩口を手で抱いてベンチの上で丸くなっていた。
向こうのスナックから客が出てきたのか、わいわいと話し声が聞こえる。
イツキは見つからないようにと、さらに小さく、丸くなる。
酔っ払いと、店の女の子の声が夜の通りに響き、やがて、聞こえなくなっていった。

次の日は一日、同じベンチでぼんやり過ごして、夕方、駅前の定食屋でご飯を食べて
またベンチに戻って、丸まって眠る。

次の日も一日、同じように過ごしていたのだが、どうにも身体が重たくて汚くて…
街中で見つけた古びたラブホテルに頼み込んで…1人で泊まらせてもらう。
2日ぶりに風呂に入って、備え付けのカップラーメンを食べて、独特の臭いのするベッドに横になると、少し、気持ちが紛れたのだが…

それで所持金も尽きてしまい…

次の日からはまた、公園のベンチに戻って、ぼんやりと過ごすしか無かった。



ケータイには佐野からのメールが何通か届いていた。

『どこにいる?連絡しろよ』
『とりあえず連絡くれ。心配してっから』
『イツキ。大体の話は聞いたよ。お前の気持ちも解るけど…とにかく戻って来いよ。大丈夫だから』
『イツキ。俺が言った事、気にしてるのか?あんなの、嘘だよ。社長も、お前の事、待ってるから』

読み返しては、ぱたりとケータイを閉じて、はあと溜息をついた。



このままではどうにもならないことは解っていたのだが、正直、イツキはまだ、自分の状況を冷静に判断できる状態では無かった。
夕方になると空腹でお腹がぐうと鳴ったが、コンビニに行く気力もなくて、そのままベンチに丸くなる。
スナックから聞こえてくる下手糞なカラオケの歌声を聞きながら、何日くらいこうやっていたら、死ぬんだろうかと考えていた。



その歌声も止んで、スナックの客が帰る気配がして、ざわめきも無くなって、しばらくした頃、
一人の男が、イツキの傍に近寄って来た。





posted by 白黒ぼたん at 23:45 | TrackBack(0) | 日記
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