2011年09月05日

焼肉屋で3人






「勝手にヤッてもいいが、それは俺にバレないようにしろ。ただし、俺の仕事や金が絡む話なら、その前に連絡しろ。
俺が部屋に帰る時には、部屋にいろ。痕跡を残すな」
「何、それ。じゃー、俺、…誰かと勝手にエッチしててもいいの?」
「してるだろうが。…バレていないとでも思っているのか?」
「……してないよっ、……してない…」

「イツキくん。カルビが焦げています。…ああ、社長、それはポン酢です、ごま油はこっちです」


焼肉屋にて。


一ノ宮は盛大な溜息を付きながら、鉄板の上の肉を返し、イツキの皿に盛る。
黒川、イツキ、一ノ宮の三人でここに来てから、すでに小一時間。
テーブルの上には空のジョッキが並び、空のボトルが並び、さして酔っていない一ノ宮は二人の酔っ払いの相手に閉口しているところだった。

「…じゃあ、マサヤも…ちゃんと話してよ。何か決める前に…。どうしてそうなるのか、そうしなきゃいけないのか。
…そうしたら、俺、ちゃんと…言う事、聞くから」
「…馬鹿か。面倒臭い。お前、自分が何様だと思っているんだ?」

相変わらずの口調の黒川に、イツキは頬を膨らませて睨んで見せる。
そのイツキの前の皿に、一ノ宮は焼きあがった肉と野菜を乗せて、黒川のグラスに新しい水割りを作る。
そして、2人の顔を交互に見遣りながら…どこか、何か、変わった所があったのだろうかと考える。


数年前。
泣いてばかりのイツキと、それを組み敷いて笑う黒川と。
絶対的な上下関係は変わらないはずなのに、いつか、その中身だけ、何か違うものに変化しているようだった。



「…何だ、一ノ宮?」
「…いえ…、別に……」


つい、思い出し笑いで顔をほころばせる一ノ宮に、黒川が不思議そうに声を掛ける。

時間とは、そうやって流れていくものなのだな…と、一ノ宮は思い、そんな感傷を抱く自分に驚き、

その思いごと、ビールの泡と一緒に、喉の奥に流し込んだ。




posted by 白黒ぼたん at 00:16 | TrackBack(0) | 日記
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