2011年09月08日

2人の部屋







最初に、この部屋に連れて来られた時は、そこにはまだ誰かの気配が残っているようだった。
おそらく、黒川が誰か、別の相手との時間を過ごしていた場所だったのだろう。


洗練されたインテリアが並んでいても、どこか殺風景で、生活感がまるで無い部屋は
住む場所、というより、ホテルか何かのようで…
実際、イツキも、ここで黒川に本意では無い関係を何度も強いられていた。

イツキは「契約」の後、しばらくは実家にいたのだが、無茶な「仕事」のため、まともに家にいられる時間は少なくなっていた。
やがて、両親を地方に飛ばし、実家が無くなると…イツキはこの部屋に本格的に住みつくようになる。

部屋の内装や家具に大きな変化は無かったが、それでも、あちこちにイツキの私物が増え、匂いが付き、
そこはだんだんと、生活をする場所になってくる。

台所にあるカップは、いつの間にか、イツキのもの、黒川のもの、と区別が付くようになっていたし、
洗面所には安手のドラマのように、2人の歯ブラシが並んでいた。

もとより、イツキには、この部屋以外、帰る場所は無かったし
黒川も、この部屋に来る時は「帰る」とか、「戻る」という言い方をしていた。
…もっとも、黒川には、ここ以外にどこか、行く場所があるようだったが…
それでも、ここは、2人の部屋であることに間違いは無かった。




「ここを出る。荷物をまとめておけ」


なので、突然こんな事を言われては、驚いて目を丸く見開いてしまうのも仕方が無い。

「…引っ越すの?、…どうして?」
「その方が色々、都合がいいからな」

相変わらず言葉が足りない黒川に、イツキはだた、戸惑うばかりだった。









posted by 白黒ぼたん at 00:56 | TrackBack(0) | 日記
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