2011年09月09日

ダンボール






次の日の昼間、イツキの部屋に、ダンボールを抱えた一ノ宮がやってきた。
それを手際よく組み立て、部屋に並べると、イツキに荷物の整理をするようにと言う。

「まあ、イツキくんの身の回りの物だけで良いですよ、後はこちらでやります。
荷物が出来次第、少しずつ運んで行きますから」
「…トラックとか…、引越し屋さんとか…じゃ、ないんだ…」
「そんなに量も無いでしょう?」

一ノ宮はリビングのボードを覗いて、並んだ酒瓶やグラスをどうしようかと考えていた。
イツキはソファに座ったまま、部屋の中を見回す。
本当の家では無いにしろ、ここが、自分の居場所だった。
そこから理由も解らず出ろと言われて、不安にならない訳がなかった。

「…引越し、じゃなくて…夜逃げ、みたい」
「ははは。そうですね」

不安を紛らわすつもりの冗談を肯定されて、ますます、心細くなる。

「……俺、…どこ…行くのかな…?」



イツキがそう小さな声で呟いた時、やっと一ノ宮は、何かおかしい事に気付いた。

「…もしかして…、イツキ君、社長から何も聞いていないんですか?」
「……来週、ここを出る、とだけ」

「…まったく!、…あの人は!!」

珍しく一ノ宮は声を荒げる。
相変わらず、イツキに必要な事すらきちんと伝えない黒川に、怒っている様子だった。
そのせいで何度も、つい先日だって、擦れ違いがあったというのに…。

「イツキ君。…私から話す事は出来ませんが…、大丈夫ですよ。悪い話しではありません」


一ノ宮はダンボールを脇に寄せるとイツキの傍に立って、慰めるように、肩をぽんぽんと叩いた。





posted by 白黒ぼたん at 00:05 | TrackBack(0) | 日記
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