2011年09月16日

しょんぼり佐野っち






ラーメンも食べ終わって、イツキは脂っぽい口元を拭いて、時計を気にする。
まだ、片付けがあるのか…社長が来るのか…どちらにしても、佐野と一緒に過ごす時間は無さそうだった。
それでも佐野は一応、「なあ、この後…どっか行かねぇ?」とイツキを誘い、
イツキに、ふふと鼻で笑われ、「…行かない」と言われて、撃沈するのだった。

店を出て、タクシーを拾うイツキについて、通りを歩く。


「…真由子さんは?…会ってるの?佐野っち」
「ああ?…ああ。……お前、真由子と何かあったのか?」
「んー…。ちょっと、話し、しただけだよ」

その程度の話しをしながら、イツキは丁度良い場所で立ち止まって、車の流れに目をやる。
空車のタクシーを見つけて手を挙げる、イツキの背中を、佐野はじっと見つめた。

相変わらず細い肩。小さな背中。
少し伸びた髪のせいで、せっかくの綺麗なうなじが、隠れてしまうのが残念。

「…な。…連絡しろよ。片付けとか手伝うぜ?」

そう声を掛ける佐野に、イツキは振り返らず返事をする。
目の前にはもうタクシーが、ウィンカーを上げて、滑り込んで来た。

「新しい住所…俺もまだ知らないけど…でも、教えるなって言われてるんだ。誰も、入れるなって」
「…あ。そうなんだ…」
「でも、メールはするよ。…ありがと、佐野っち」


最後にイツキは振り向き、佐野に、微笑む。
バイバイと手を振って、ドアが開いたタクシーに、乗り込んでしまった。


佐野は、同じように、バイバイと手を振って…


これが、本当に最後の別れにならない事を、祈った。




posted by 白黒ぼたん at 00:21 | TrackBack(0) | 日記
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