2014年01月06日
迷い子
イツキが居ない部屋の中、黒川は一人ソファに座りテーブルに足を投げ出し、何本目か解らない煙草を吹かしていた。
金曜日の真夜中に仕事が終わり、明けて土曜日の明け方にメールが一回。
土曜日の昼前に、寝ぼけた電話が一回。
それから日曜日は連絡が取れずに、今は月曜日の昼前。
イツキと2,3日連絡を取らない事はそう珍しい事でも無かったが…、部屋に来る約束や、連絡を入れろと言った時には大抵、それらは守られて来た。
「…どこかで…飲み潰れて…通りすがりの奴と…ホテルにしけ込んでいる……
……それとも…、ちょっと嫌気が差して…、ふらりと…、一人旅をしている……」
有り得そうな状況を思いつくまま口にして、黒川は、一人で笑う。
以前、イツキが居なくなった時には、そんな事も考えられたのだけれど、今は違うと思える。
けれど、それならばどこにいるのか…、それが解らない。
解らない以上、『遊び過ぎて帰るのが遅くなった』と思いたかったのだけれど、それも限界だった。
「……ああ、西崎か…。いや、別に、特に用事じゃないんだが…。……何か変わった事はあったか……?
……いや、いい。……何でも無い…。
……佐野はどうしている?……真由子と箱根?……は、は。いや、何でもない、聞いてみただけだ。……じゃあな」
何の進展もなく西崎との電話は終わる。
黒川は疲れたようにため息をつき、煙草に手を伸ばすのだけれど
生憎、それはもう、空っぽだった。
posted by 白黒ぼたん at 23:35
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